岡山大学新聞268号 1982年4月30日
新女子寮がオープン でも問題は山積みだ3月末、農学部農園西側に新女子寮が完成し、4月に入って新入生33人を含む108人の女子寮生が生活をはじめた。この鉄筋コンクリート5階建ての新女子寮、外観はマンションかと思うほどの豪華さで、これまでの馬小屋を改造したという旧女子寮とはまるで別世界のようだが、食堂廃止や負担区分の増加などによって彼女らの生活はかなり苦しくなっているようだ。新女子寮と旧女子寮とで最も大きく異なるのは相部屋(4人部屋)が全て個室になり、寮食堂が廃止され、一部寮生負祖であった水光熱費がほば全額寮生負担となったこと。これは文部省が新寮を建てる際に要求する四条件が適用されたためである(四条件のうちあと一つ、管理運営権は学生部長が持つ、は実質的に寮自治を認めるということになっている)。寮生がこれまでも指摘してきたようにこの四条件の適用によって「だれもが安く生活できる」という福利厚生施設としての寮の役割が後退したことは否めない。 実際に生活費の増加を見てみると次のようになる。まず寄宿費、運営費、光熱費などを含む寮費が月額2700円から4月分で64OO円にアップした。そして食堂がなくなったためにこれまで毎日三食とって月2OOO円であった食費が、外食と自炊をあわせて「一万円から三万円はかかるのでは」という事である。しかもこの4月分寮費64OO円には電気代の負担分が含まれていないため、実際には合計で二万円近いアップという事になりそうだ。 この金額、もはやあまり下宿住まいと変わらないような気がする。それでも下宿よりは安いぞ、とも言えるが、比較的貧困家庭の出身者が多く、寮でなければ大学に入れない、という寮生達にとってみれば重要な間題だ。 もう一つ、全室個室化による寮内の雰囲気の変化もやはり予想通りあまりよくない方向へ向かっているらしい。会合や学習会があっても人が出て来ないという。これまでは四人部屋、三人部屋であったため一応上級生が新入生を運れて参加するようにしていたのだがそれがなくなった(幾つかの部屋ごとにまとまってブロック化し、そこの上級生がめんどうを見るようにはしているが)。さらに各室ドアに内外からカギがかかるようになったせいで、上級生が呼びに行っても閉じ込もってしまう人もいるらしい。 たしかにプライバシーの守れる個室は魅力的だが、それに埋没してしまって寮全体の共同生活というものを考えなくなってしまうのは問題ではないだろうか。この事は前に書いた負担区分や食堂の件についても「私は払えるから」という感じになってしまい、福利厚生施設としての寮が見えにくくなるという状況をも生み出している。 寮生がバラバラに分断されて寮が民間アパートの様になってしまうというのは決っして良い事ではないがこの新女子寮を見るならばそのような大学側のネライ(?)は実現しつつあると言えるだろうか。 鉄格子に囲まれローソクの明りで生活する阪大寮生もう一つ寮についての話題、これは大阪大学から。阪大では以前から自治寮をつぶして四条件を完全導入した新々寮にする計画が強引に進められてきたが、これに反対して寮生による自主管理を続けている宮山寮に4月5日、機動隊が出動して寮生をいったん外に排除、その間に食堂などを鉄格子でふさぎ、金網で囲まれたガードマンの詰所を作り、さらに居室部分への電気・ガスをストップさせる、という事態が起きた。阪大には四つの寮があるがそのうち新稲(女子)寮、宮山寮、鴻池寮の三寮は73年ごろから負担区分、入退寮権などをめぐって大学当局と対立、これに対し75年、当局は三寮を"入寮暮集停止"とした。寮生側は自主入寮募集を行って新入生を獲得、寮の運菅を続けてきたが、まず79年、新稲寮に「正規」入寮者(75年前の入寮者)がいなくなった事を理由に退去命令を出し、寮生を全員退寮させて建物を取り壊した。 そしてこの3月、宮山寮にも「正規」入寮者がいなくなったのである。まず3月18日に一週間の期限付き退去命令、2月26日には入試当日の原理研糾弾に対する寮内への警察導入、寮生三名の逮補があり、続いて3月31日をもって宮山寮委員会を認めないこと、電気・ガスを止めることを通告してきた。 4月5日早朝、大学職員、機動隊員ら二百人余りが宮山寮に突入、泊り込んでいた寮生や支援の他大学寮生を排除した。その後業者が入って食堂、事務室、居室の一部などを鉄格子で閉鎖し、電気・ガスを止める工事を行った。現在寮生たちはローソクやマキで生活している有り様だ。 さらに4月7日の入学式ではビラをまこうとした寮生らが警官隊に排除され、4月12日には大阪地裁より「仮処分=占有移転禁止」が執行され、現在の寮生活は"非合法"のものとなった。当局は夏休みごろまでに宮山寮を内部より工事して全室個室、食堂なしの新々寮に改造しようとしているらしい。 しかし宮山寮生たちはローソクとマキででも寮に住み統けており、寮の自主管理を今なお続けている。また全国的な支援の輪も広がっているようだ。 4月20日には阪大石橋キャンパスで全国学生共同闘争が取組まれた。主催は全国学寮交流会と阪大宮山寮・鴻池寮。協賛筑波大学闘争委員会であった。これには全国から12大学350人が集まった。岡大からも男女子寮生ら20人が参加。壇上に立った北は引前大から西は広大までの各大学、寮の代表もそれぞれの大学で廃寮化や移転などが進行している事を述べ、共に団拮して闘っていこう、宮山寮を防衛しようと訴えていた。 一方的に入寮募集を停止し、その後は四条件による新々寮化を認めなければ話し合いにも応じない、といった強行な廃寮攻撃を行ってきた阪大当局は、たとえば総長専決体制をひいて教授会自治なども制限する、などかななり特殊な体質を持っており、岡大のように昨年9月の新女子寮着工阻止のバリケード撤去に上層部が警官隊の出動を要請したことに対して教官側からの反発が相次ぎ、桔局"話し合い路線"に転換したところとは大部異なっている。おそらく全国でもエゲツない大学の一つだろう。 しかし自治寮をつぶして新々寮化する、というのも大学全体の管理を強めるというのも文部省の方針。大学によって多少の差があっても同じように進めようとするだろう。ここでその"差"をもたらすのは学生や教官の態度、世論であるだろう。岡大でもあと二、三年後ぐらいには男子寮の新々寮化が予想されている。その時いったいみんなはどうする。 文化系からは二人だけ、片翼飛行の総務委員会4月12日に第一回の幹事会が開かれ、今年度の学友会総務委員会を次の通り選出した。
これを見て気が付くのは文化系サークルからは軽音と映研の二つしか総務委員が出ていないということだ。規約では総務委員会は文化系サークル五つと体育糸サークル五つからの計10人によって構成されることになっている。そしてこれまでも、定員の10人全員が選出されることは少なかったが、去年から総務務委員を出す文化系サークルが減りはじめた。
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