雁ガ腹摺山山行報告
●参加者
男性;コアラ、あきじ
女性;マロ子、たけちゃん
●コースタイム
金山鉱泉(タクシー・軽トラ荷台)奈良子林道分岐(11:40)
−百間干場登山口(12:00〜10)−林道出合(13:05〜10)
−雁ガ腹摺山山頂(14:05〜45)−大峠(15:20)(車)金山鉱泉
●あきじさんの報告
あきじです。今年もよろしくお願いいたします。
1/3、コアラさん企画で冬の雁ガ腹摺山に行ってきました。
メンバーはコアラ、たけちゃん、マロ子、あきじの4人。
これは、その時の寒くも暖かい経験を思いつくままに書いたものです。
雁ガ腹摺山は、旧500円札の裏にもデザインされていた
富士山が撮影されたことでも有名な山で、
21世紀の始めにその富士山を見に行くのを目的に、
帰りの渋滞覚悟であきじの車を使い、
中央高速の大月インターから雁ガ腹摺山を目指す山行が始まりました。
なんとなく、初めから波瀾含みを予感しつつ・・。
雁ガ腹摺山は、
大峠から登ると小1時間で頂上に立てるほど簡単な山ではあるのですが、
肝心の大峠に向かう林道は自家用車は冬期間通行止め、
ということが事前の情報で分っておりました。
林道が自家用車では通れない。しかし、歩いて大峠まで行くには遠すぎる。
そこで検討の末、山行の後に温泉にも行きたかったので、
歩行程で雁ガ腹摺山まで往復5〜6時間の所にある「金山鉱泉」の
山口館というひなびた旅館に車を停め
(本来ならそこから歩いて山頂を目指すべきなのですが、
すでに時間はお昼に近くなっており、とても歩くのは無理と判断して)
そこからはタクシーで行動することにしました。
来てくれた運転手さんは話し好きでとても気のいい人で、
色々な話しに花を咲かせている合間に、
運転手さんにタクシー会社の本部に、
大峠への道が本当に閉鎖されているかどうかを確認してもらいました。
結果は「年末からすでに閉鎖済み」とのこと。
しかたなく、その林道よりずっと東にある奈良子林道へ向い、
そこから頂上を目指すことにしました。
大峠への林道のゲートはしっかりとチェーンがかけられており、
閉っているならばとても開ける事は無理だが、
奈良子林道のゲートは、仮に閉っていたとしてもあけることはできる、
という運転手さんの話しに心強いものを感じ、
7300円あまりをかけて奈良子林道の入り口まで到着。
しかし、それまでの期待も空しく、
なんとゲートはしっかりとチェーンがかけられ施錠されており、
鍵を壊してはいらない限り、そこから先は車では行く事ができませんでした。
新年早々ついていないな。
しかし戻ることもできないので、ここからは歩くしかないのだが、
地図を見ても道がはっきりせず、どうしたものかと思案に暮れてしまいました。
そうしているところに、ふと気がつくと目の前にチェーンソーを片手にもった、
地元の林業のおじさんが怪訝な顔をしながら近付いてきました。
その時、私はチェーンが外れないものかと鍵のあたりをながめていたので、
てっきり怒られるのではないかと思い、おじさんの深い皺が刻まれた、
かなり無愛想なその顔をじっと見つめたまま、ほんの数秒固まっていました。
おじさんは、なにも言わずじっとこちらの顔を見ているだけ。
こちらも、何も言えずただ見返すだけ。
しかし、次第におじさんの顔がだんだん柔らかくなってきて、
タクシーの運転手さんやコアラさんや私が事情を話している内に、
何とゲートの鍵を取り出して鍵を開けてくれました。
しかし、たまたま新年の山の神で山に入っていただけなので、
タクシーが私達を乗せて上の方まで行き、
また戻って来るのを待っていることはできない、
と言われ、もっともだと思いながら、そこから歩く覚悟を決めた時、
なんと、そのおじさんは「この先の分岐点まで車で乗せてってやる」と言い、
ゲートの外に停めてあったおじさんの軽トラックを
私達の近くまで動かしてきてくれました。
私達を荷台に乗せた車は「落ちるなよ!」
というおじさんの一声と共に発進。
私達は、子供に戻った気分でその、
思いもかけなかった山中のドライブを楽しみ、はしゃいでしまいました。
6〜7分走った所で、おじさんの言う分岐点まで到着。
おじさんは「後ろに乗ってるんじゃ、寒いだろう。
もっと上まで乗せて行ってもいいんだが、
ここからは道も分りやすいから」ということで私達は荷台からおり、
おじさんに深々と頭を下げてお礼を言い、そこでおじさんとは別れました。
「どうせだったらもう少し乗っていたかった」
というみんなの一致した意見を確認しつつ、
今年始めての「歩き」は開始されました。
道は砂利道でだらだらと登りが続いており、
天気が良かったので歩いているうちに少し汗ばむくらいになりました。
林道から本格的な登山道に入ると、思った以上に傾斜がきつく、
体が慣れるまで少し時間がかかり、
そこで始めて最近の運動不足を思い知らされました。
1時間半ほど山中を登ると、目の前に林道があらわれました。
軽トラックのおじさんに、
わがままが言えたならここまでは楽して来れたな、
とみんなで話しながら、気を取り直して山頂へ。
雰囲気的にはすぐに着きそうだったのですが、
なかなかゴールが見えず、
最後の登りで、ちょっとばて気味になってしまいました。
やっと開けた山頂が見えて、ほっとした気分に。
山頂付近は南向きで、
日がよくあたるカヤト(萱などの繁る場所)になっており、
南方には雄大な富士の姿が良く見渡せ、
とてもいい所、ではあったのですが、
見晴らしが良いぶん物凄い風の吹きすさぶ場所でもありました。
この日の山頂は、風が無くてもおそらく零度に近い気温だったと思われますが、
風の勢いは頂上を示す柱のあたりが最もすごく、
体感温度は氷点下10度以下にはなっていたのではないかと思います。
山頂で食事と記念撮影をしている時、
下の方の草むらで寝転んでいたおじさんが我々に近付いてきて、
話しなどをしているうちに、その人が地元の人で、よくここには来る事、
今日は正月で暇なのでカメラ片手に登ってきたことなどが分かりました。
しかし、そこでひとつ疑問が沸き起こってきました。
「いったいどこから登ってこられたのですか?」
その我々の問いに、いとも簡単に「大峠からだよ」との答え。
私達は顔を見合わせて、
「でも大峠はゲートが閉っているのではないのですか?」と聞いてみたところ、
「いや、開いてるんだよ」との答えに、私達はショックが隠しきれませんでした。
ここまでかけた苦労とお金(タクシー代)はいったいなんだったのか!
その時、すでに時間は午後2時半近く。
ここから金山鉱泉まで歩いて降りると、どう考えても4時半は過ぎてしまい、
暗い山道を歩かなくてはならない。
山頂で氷点下まで冷やされた体にむち打って、
暗い道を歩く覚悟を決めていたところに、先ほどのおじさんが、
「大峠まで一緒に来れば、そこから金山鉱泉まで車に乗せていってやるよ」
私達はあまりのうれいい申し出に「是非お願いします!」と、
遠慮もなく返事をしてしまい、
それまでのブルーな気分も吹き飛んで、急いで後片付けをして、
一緒に大峠までの楽しい道を歩き、
おじさんのピックアップトラックに乗せてもらい、
無事金山鉱泉まで辿りつくことができました。
金山鉱泉「山口館」のお風呂は、
一度に2〜3人程度しか入れないくらいの小さなお風呂でしたが、
檜風呂で感じも悪くなく、なにより冷えた体には最高でした。
結局今回の山行は、山頂は寒く、
また富士山も逆光でイマイチだったのですが、
都会ではなかなか味わえない人の親切、暖かみが感じられた、
収穫の多い、思いで深い山行となりました。